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日本所得税における予定納税制度

在留資格管理強化時代における所得税コンプライアンスと予定納税の重要性
2026年7月16日 by
日本所得税における予定納税制度
KAZUHISA MOCHIZUKI


はじめに
近年、日本においては外国人の在留資格取得、更新及び永住許可申請における納税状況確認が一層厳格化する傾向にあります。特に、高度専門職、経営管理ビザ、永住許可、配偶者ビザ更新等においては、所得税、住民税及び社会保険料の適正な納付状況が重要な審査項目となっており、税務コンプライアンスは単なる税務上の問題ではなく、在留管理制度そのものと密接に関連する事項となっています。

このような状況の下、近年では外国人本人のみならず、その税務申告を支援する税理士、行政書士、企業の人事担当者等からも、「予定納税義務の有無をより厳格に確認したい」という要請が強まっています。特に個人事業主や海外所得を有する外国人については、確定申告のみならず予定納税の履行状況も税務コンプライアンスの一部として認識する必要があります。

予定納税制度は、一時に多額の税負担が発生することによる納税者の負担を軽減するとともに、国の歳入を平準化する目的から設けられた制度ですが、近年では実務上、外国人の在留資格管理及び金融機関等によるコンプライアンス確認の観点からも重要性を増している制度であるといえます。


1. 予定納税制度の概要
予定納税とは、その年の5月15日現在において確定している前年分の所得及び税額を基礎として計算した「予定納税基準額」が15万円以上となる場合に、その年の所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納付する制度です。

予定納税制度の目的は、納税者が翌年の確定申告時に一時に多額の税負担を負うことを回避するとともに、国の税収を年間を通じて平準化することにあります。予定納税として納付した税額は、翌年の確定申告時に最終税額から控除され、不足額又は還付額として精算されます。

予定納税義務が生じる場合、税務署長は原則としてその年の6月15日までに予定納税額を通知し、納税者は通常、その3分の1相当額を第1期及び第2期に納付することになります。


2. 予定納税基準額とは何か
予定納税基準額は、原則として前年の確定申告における申告納税額を基礎として計算されます。したがって、予定納税基準額は「今年の所得税額の見込額」ではなく、「前年実績を一定の法定ルールに基づき修正した基準額」という性格を有しています。

もっとも、前年分に譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税の対象となる臨時所得等が含まれている場合や、外国税額控除又は災害減免法の適用を受けている場合には、単純に前年の申告納税額を使用するのではなく、所得税法第104条等に基づき予定納税基準額の再計算が行われます。

特に国際税務実務においては、外国税額控除の適用を受けている納税者が多く、この再計算規定は実務上重要な意味を持ちます。海外勤務者、外国法人から報酬を受ける個人事業主、国外投資所得を有する外国人居住者等については、前年の確定申告書の税額だけを見て予定納税義務を判断することは適切ではありません。


3. 申告納税見積額との違い
予定納税基準額と混同されやすい概念として、「申告納税見積額」があります。

予定納税基準額は、前年実績を基礎として機械的に計算される制度上の判定額であるのに対し、申告納税見積額は、予定納税額の減額申請を行う際に、その年の実際の所得状況を基礎として見積もる最終税額を意味します。

申告納税見積額を計算する場合には、給与所得、事業所得、国外所得等の見込額に加え、所得控除、源泉徴収税額、外国税額控除、住宅ローン控除等の税額控除及び当年度の税制改正内容まで考慮して計算します。

したがって、以下のような整理を行うことが実務上有用です。

予定納税基準額 = 前年実績を基礎とする法定判定額
申告納税見積額 = 当年実績見込みを基礎とする最終税額予測額


4. 外国税額控除と予定納税基準額
国際税務実務において最も議論となりやすい論点の一つが、外国税額控除と予定納税基準額との関係です。

実務上は、確定申告書における「申告納税額」、すなわち所得税及び復興特別所得税の額から外国税額控除及び源泉徴収税額等を控除した後の金額を基礎として、予定納税義務の有無が判断されているものと理解されています。この考え方は、前年に既に負担済みである外国税額及び源泉所得税を考慮した上で予定納税義務を判定するという意味で、実務上及び経済実質上合理的であると考えられます。

一方、所得税法第104条等の文言を見ると、「源泉徴収をされた又はされるべきであった所得税の額」を控除すると規定されている一方で、外国税額控除について直接言及しているわけではありません。そのため、条文解釈のみから見ると、外国税額控除部分を予定納税基準額計算においてどのように扱うべきかについて疑義が生じる余地は存在します。

もっとも、所得税基本通達においては、「予定納税基準額を計算する場合における所得控除及び税額控除」という表現が用いられており、税額控除一般を考慮する実務運用が採用されていることがうかがえます。その意味では、外国税額控除を考慮した実務運用は、少なくとも現在の課税実務においては一定の合理性を有するものと考えられます。


5. 在留資格管理強化時代における予定納税確認の重要性
近年の出入国在留管理行政においては、納税義務の履行状況に対する確認が一層厳格化しています。特に永住許可申請、高度専門職ポイント制、経営管理ビザ更新等においては、所得税及び住民税の適正な納付状況が重要な審査項目となっています。

そのため、外国人納税者については、確定申告書の提出や住民税の納付だけではなく、予定納税義務の有無及びその履行状況についても確認する必要性が高まっています。

特に、海外所得、事業所得、不動産所得等を有する外国人居住者については、予定納税通知が送付されていたにもかかわらず納付が行われていなかった場合、延滞税等の附帯税のみならず、税務コンプライアンス全体に対する評価へ影響する可能性も否定できません。

今後、外国人の在留資格管理がさらに厳格化することが予想される中、予定納税制度に対する理解及び適切な管理は、国際税務実務における重要なコンプライアンス項目の一つになるものと考えられます。


おわりに
予定納税制度は、単なる前払い制度ではなく、前年実績を基礎として所得税負担を平準化するために設けられた重要な制度です。

特に国際税務分野においては、外国税額控除、国外所得、非居住者関連所得等との関係から、予定納税基準額の計算が複雑化する傾向があります。また、外国人の在留資格管理強化という近年の行政環境を踏まえると、予定納税義務の有無及び納付状況について、従来以上に慎重な確認が求められる場面が増加しているといえます。

国際税務及びイミグレーション実務の双方を踏まえた適切な予定納税管理は、今後ますます重要性を増していくものと考えられます。


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KAZUHISA MOCHIZUKI 2026年7月16日
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