租税条約に関する届出書とは
外国法人・非居住者が日本から配当、利子、使用料、報酬その他の国内源泉所得を受け取る場合、日本の国内法上は源泉徴収の対象となっていても、租税条約によって税率の軽減または免除を受けられる場合があります。その適用を日本で受けるための実務手続が「租税条約に関する届出書」です。
この届出書は、単なる税務フォームではありません。適用される租税条約、所得の種類、受領者の居住者Status、特典条項、所得の受益者、支払者との取引関係などを踏まえた適切な判断と準備が必要です。
関連コンテンツ:
「どのフォームを書くか」より先に、租税条約の適用判定が必要
租税条約届出書の実務では、フォームの作成自体よりも、その前段階の判断が重要です。
日本国内法上その所得がどの国内源泉所得に該当するか、租税条約上どの所得条項が適用されるか、受領者が条約上の居住者に該当するか、日本に課税権が残るかを確認した上で、初めて適切な届出書を選択することができます。
したがって、実務では国内法上の取扱い → 租税条約の適用 → MLI・Protocol等の確認 → 届出書の選定・提出という順序で検討することが重要です。
特典条項・居住者証明書への対応
特典条項が設けられている租税条約について一定の条約特典を受ける場合には、通常の届出書に加えて、「特典条項に関する付表(様式17)」や居住者証明書等が必要となる場合があります。
当事務所では、単に必要書類を案内するだけではなく、対象となる租税条約の特典条項を確認し、受領者がどの要件に基づいて条約特典を受けることができるかを整理した上で、必要な届出書・添付書類を作成します。
外国LLC・Partnership・透明体はさらに注意
米国LLC、Partnership、海外Fund等では、日本と相手国で事業体の課税上の取扱いが異なる場合があります。
このような場合には、単に法人名義の居住者証明書を提出すれば足りるとは限らず、構成員レベルでの条約適格性の確認や、場合によっては様式16その他の追加書類が必要になることがあります。
透明体やFund Structureが関係する場合には、事業体そのものではなく、誰が条約上所得を取得した者として扱われるかを確認することが重要です。
提出が支払日に間に合わなかった場合
租税条約に関する届出書は、原則として最初の支払日の前日までに、所得の支払者を経由して、その支払者の所轄税務署へ提出します。
期限までに届出書が提出されていない場合には、日本側支払者は原則として国内法に基づく税率で源泉徴収を行います。
もっとも、その後に租税条約の適用要件を確認し、必要な届出書および「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を提出することにより、条約適用後の税額との差額について還付を請求できる場合があります。
すでに日本で20.42%等の源泉徴収を受けている場合でも、租税条約の適用要件を満たしていれば、還付請求が可能なケースがあります。
よくある対象取引
| 取引の例 | 主な検討事項 |
|---|
| 日本法人から外国株主への配当 | 条約税率、持株割合、保有期間、特典条項 |
| 日本法人から海外への利息 | 利子条項、受益者、免税・軽減税率 |
| ソフトウェア・商標・特許等の使用料 | 使用料該当性、条約税率、国内源泉所得 |
| 海外コンサルタント・外国法人への報酬 | 事業所得、人的役務、PEの有無 |
| 短期出張者の給与 | 183日基準、雇用主、給与負担 |
| 年金その他の所得 | 適用条約の所得条項、居住地国課税 |
Mochizuki & Associatesのサポート範囲
当事務所では、対象所得の日本国内法上の取扱いの確認、適用租税条約およびMLI・Protocol等の確認、条約上の軽減・免除要件の判定、必要な届出書・様式17その他の添付書類の選定、居住者証明書等の必要資料の案内、届出書作成、日本側支払者との調整および税務署への提出まで一貫して対応します。
また、すでに国内法税率で源泉徴収されている場合には、租税条約に基づく還付請求についても対応します。
日本側支払者から「Tax Treaty Formを提出してほしい」と言われたものの、どの様式や証明書を提出すればよいか分からないといった外国法人・非居住者からのご相談にも対応しています。