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日本における納税カレンダー

はじめに

国際展開を進める企業が日本国内で事業を展開する際、「いつ何を納税しなければならないか」というスケジュール管理は、税務コンプライアンスを維持し、ペナルティや延滞リスクを回避するために極めて重要である。ここでは、主に法人税・消費税・源泉徴収税といった主要税目を中心に、いわゆる「日本納税カレンダー」について整理する。特に海外企業の日本子会社・日本支店という視点を踏まえ、国際税務専門家としての視点から、実務上押さえておきたいポイントも併せて解説する。


1. 年度と会計期間の設定

法人税等の納税スケジュールを理解するうえで、まず押さえておきたいのが「課税期間(会計期間)」の設定である。日本では、法人の課税期間はその定款等で定めた事業年度となる。

たとえば、3月末決算(事業年度4月1日~翌年3月末)を採用する法人が多いが、外国法人の日本支店等では本社の会計年度に合わせることも可能である。 

この設定が、確定申告・納税の期限を決定づけるため、まずは自社の課税期間がいつまでかを明確にしておく必要がある。



2. 法人税(国税・地方税含む)の申告・納税期限

法人が日本で行う事業に関して課される法人税(国税)・法人住民税・事業税などを総合して「法人税等」と便宜的に呼ぶことがある。ここではその申告・納税のスケジュールを整理する。

まず、課税期間終了後、通常、2ヶ月以内に確定申告書を提出するとともに、納付を行う。例えば、12月31日決算なら翌年2月末日までが申告・納税の期限として一般的である。なお、延長申請することにより、申告期限を1ヶ月延長することもできる。

さらに、課税期間が6ヶ月を超える法人には、中間申告・中間納税(暫定納税)が求められる。これは、前期の税額等を基準に、課税期間の途中(6ヶ月経過後)に中間納税を行う制度である。

例えば、3月末決算の会社なら、一般的に会計期間終了から2ヶ月以内(5月末)に確定申告・納税、そして期中の中間納税を8月末などに行うケースもある。

ただし、注意すべきは、「申告期限を延長できても、納税(支払)期限は延長されない」という点である。申告延長が認められても、納税はあくまで所定の期限までに行わなければ遅延利息やペナルティがかかる。 

このため、税務キャッシュ・フローの観点から、期末に向けた資金準備と納税スケジュールの事前管理が重要である。


3. 源泉徴収税および個人関連税務のスケジュール

法人税等だけでなく、給与や報酬を支払う事業者にとっては源泉徴収税(給与・報酬・配当等)に関する納税義務も見逃せない。

例えば、給与から源泉徴収した所得税は、原則として翌月10日までに納付しなければならない。 また、従業員10名未満等の小規模事業者が「半年毎納付」の承認を受けている場合には、7月10日(上半期分)・1月10日(下半期分)に納付という選択肢もある。

これらは毎月納付が通常だが、事業の規模や適用状況によって納付回数等が異なるため、該当条件を確認することが欠かせない。

さらに、固定資産税や市・都道府県民税(住民税・事業税等)でも、各市町村ごとに納期が分割されており、例えば東京都特別区内では1月/6月/9月/2月などの分割納付が設定されている。

国際展開企業にとっては、海外親会社からの報酬支払いや国内役員報酬支払いなどで源泉徴収が発生しうるため、これらの納付時期とプロセスを事前に設計しておくべきである。


4. 消費税の申告・納税スケジュール

国内で課税売上を伴う事業を展開する法人・個人事業者にとって、National Tax Agency(以下「NTA」)が所管する消費税(及び地方消費税)も重要である。まず、課税期間・課税事業者の判定基準を把握することが必要である。法人の場合は会計上の事業年度が課税期間となる。

申告・納付期限については、法人の場合、課税期間終了の翌日から起算して原則2ヶ月以内に、確定申告・納付を完了しなければならない。 たとえば、12月31日決算の法人なら、翌年2月末が申告・支払期限となるケースが一般的である。 なお、延長申請することにより、申告期限を1ヶ月延長することもできる。

また、消費税についても中間申告・納税が必要な場合がある。法人で前期の年間消費税額が一定額を超える場合には、年3回あるいは毎月の分割納税が課されることがある。

加えて、2023年10月から導入された「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が影響を及ぼしており、仕入側(仕入れ控除の立場)で請求書発行事業者登録を行っていない取引先との取引がある場合、入力税額控除が制限される可能性がある。 

消費税は売上・仕入れ等のキャッシュ・フローに直結するため、納付スケジュールに加えて制度的な変化も踏まえて準備しておく必要がある。


5. まとめ

本文では、国内税務の一般的スケジュールを整理したが、実務上は法人の規模・業種・会計期・前期税額・適用税制(青色申告制度・中小企業特例等)によって納付期日や中間申告の有無・回数が変わり得る。海外企業が日本で事業を展開する際には、早期に日本税務専門家と相談し、納税スケジュールとキャッシュ・フローを整備することが「税務コンプライアンス」と「事業運営の安定化」の両立に繋がる。

このように、納税スケジュールを単なる「いつ払うか」というカレンダー的視点で捉えるのではなく、法人税・消費税・源泉徴収税・地方税という複数の税目が交錯する中で、事前準備・制度理解・キャッシュ・フロー設計・報告・記録保持という実務要件を含めて捉えることが、国際税務専門家としての価値を発揮する鍵である。

Liying Huang 2025年10月30日
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