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【外国人採用の税務】中途入社時の所得税・年末調整・住民税を解説

2026年9月18日 by
【外国人採用の税務】中途入社時の所得税・年末調整・住民税を解説
Liying Huang

はじめに

中途採用を行う企業にとって、採用時の税務手続は給与計算だけに限られません。特に年の途中で入社する従業員については、前職で支払われた給与や源泉徴収税額、扶養状況、住民税などを適切に確認する必要があります。

また、外資系企業が外国人従業員を採用する場合には、通常の中途採用に加えて、日本の所得税法上の「居住者・非居住者」の判定や、海外勤務期間に対応する給与、海外親会社から支給される報酬・ストックオプション等についても確認が必要となる場合があります。

本記事では、日本法人が中途採用を行う際に確認しておきたい税務上の主要ポイントについて、2026年時点の制度を前提として解説します。


1.中途採用者の年末調整と前職給与

年の途中で入社した従業員であっても、年末まで勤務している場合には、一定の要件を満たせば入社した会社で年末調整を行います。

重要なのは、年末調整の対象となる中途採用者について、前職の給与を含めて年末調整を行うケースがあることです。

国税庁によれば、年の中途で就職した人が、就職前に他の会社から給与の支払を受けており、前職で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していた場合には、原則として前職分の給与も含めて年末調整を行います。

そのため、会社は中途採用者から前職の「給与所得の源泉徴収票」を提出してもらい、前職の給与収入、源泉徴収税額、社会保険料等を確認する必要があります。

前職の源泉徴収票による確認ができない場合には、会社で前職分を含めた年末調整を行うことができません。この場合、従業員自身が確定申告によって所得税を精算することになります。

なお、前職が複数ある場合には、その年中に支払を受けた給与について、それぞれの源泉徴収票を確認することが重要です。


2.「扶養控除等申告書」の提出と源泉徴収

中途採用者を給与計算の対象とする際には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出状況を確認する必要があります。

この申告書は、扶養親族がいる従業員だけが提出するものではありません。扶養親族等がいない従業員についても、原則として提出が必要です。

また、2か所以上から給与の支払を受ける場合、原則として「主たる給与」の支払者に扶養控除等申告書を提出します。

会社にこの申告書が提出されているかどうかによって、毎月の給与から源泉徴収する税額の計算方法が異なります。申告書の提出がない場合には、原則として給与の源泉徴収税額について税額表の「乙欄」が適用されます。

したがって、中途採用者については、入社時に必要な税務書類を回収するだけでなく、給与計算開始前に扶養控除等申告書の提出状況を確認することが重要です。


3.前職の源泉徴収票を確認できない場合

中途採用者から「前職の源泉徴収票がまだ届いていない」というケースもあります。

この場合、会社が従業員本人から聞き取った給与額だけをもとに、前職分を含めた年末調整を行うことは適切ではありません。

国税庁は、前職の給与や源泉徴収税額等について、源泉徴収票などによって確認できない場合には、前職分を含めた年末調整を行うことができないとしています。

そのため、年末調整の時期までに前職の源泉徴収票を提出してもらうことが実務上の重要なポイントになります。

前職分を確認できないまま年末調整を完了させるのではなく、必要に応じて従業員本人による確定申告で精算してもらうことも検討する必要があります。


4.年末調整ができないケースにも注意

中途採用者だからといって、必ず会社で年末調整を行えるわけではありません。

例えば、その年の給与収入が2,000万円を超える人は、原則として年末調整の対象外となります。

また、年の途中で退職し、その後再就職していない人についても、原則として退職した会社では年末調整を行いません。ただし、死亡退職など一定の場合には例外があります。

したがって、中途採用者については「中途採用=前職分を含めて必ず年末調整」という理解ではなく、その従業員が年末調整の対象者に該当するかどうかを個別に確認することが必要です。


5.住民税の特別徴収にも注意

中途採用時には、所得税だけでなく住民税についても確認が必要です。

住民税は原則として前年の所得を基礎として課税されるため、転職した年の給与額だけを見て住民税額を判断することはできません。

例えば、前年に別の会社で勤務していた従業員が年の途中で転職した場合、転職後の会社において住民税の特別徴収を継続するための手続が必要となる場合があります。

そのため、入社時には、従業員が現在どのような方法で住民税を納付しているのかを確認し、必要に応じて前職の会社や市区町村との間で必要な手続を行うことが重要です。

また、住民税の課税主体は市区町村等であり、所得税とは手続や基準が異なるため、給与担当者は所得税と住民税を分けて管理する必要があります。


6.外国人を中途採用する場合の居住者・非居住者判定

外資系企業や日本法人が外国人を中途採用する場合、特に注意したいのが所得税法上の「居住者・非居住者」の判定です。

日本の所得税法上、居住者とは、原則として日本国内に「住所」を有する個人、または日本国内に引き続き1年以上「居所」を有する個人をいいます。

ここでいう「住所」は、単に住民票の有無や国籍だけで判断されるものではなく、その人の「生活の本拠」がどこにあるかを、住居、職業、資産、親族の居住状況などの客観的事実を総合して判断します。

したがって、「外国人だから非居住者」「日本に入国したばかりだから非居住者」と単純に判断することはできません。

中途採用した外国人従業員については、入社時点の日本での居住状況や滞在予定、海外との生活関係などを確認し、所得税法上の居住者・非居住者を適切に判定することが重要です。


7.非居住者を採用する場合の源泉徴収

外国人従業員が日本の所得税法上の非居住者に該当する場合、居住者である従業員とは給与の課税関係が異なります。

非居住者については、日本国内で行った勤務に対応する給与など、国内源泉所得に該当する部分が日本の課税対象となります。

国税庁によれば、非居住者に対して国内源泉所得に該当する給与等を支払う場合、原則として20.42%の税率による源泉徴収が必要となる場合があります。

ただし、租税条約によって所得税の免除または軽減が認められる場合があります。

租税条約の適用を受ける場合には、条約上の要件を確認したうえで、「租税条約に関する届出書」などの必要書類を適切な期限までに提出する必要があります。

したがって、海外から外国人従業員を日本法人に受け入れる場合には、給与計算を開始する前に、居住者・非居住者の区分と租税条約の適用可能性を確認することが重要です。


8.海外親会社から給与・報酬が支給される場合

外資系企業では、日本法人が採用した従業員について、給与の一部を海外親会社が支給するケースがあります。

例えば、日本法人から基本給を支給し、海外親会社からボーナスや株式報酬などが支給されるケースです。

このような場合、日本法人が直接支給していないという理由だけで、日本の給与所得に関係しないと判断することはできません。

実際の勤務場所、雇用契約、給与の負担関係、支給主体、報酬の内容などを確認し、日本で勤務したことに基づく所得であるかを検討する必要があります。

特に、海外親会社が負担する給与について、日本法人が費用負担している場合や、日本での勤務に対応する報酬が含まれている場合には、源泉徴収や給与課税について慎重な検討が必要です。

外資系企業の中途採用では、給与支給元だけを見るのではなく、「誰が雇用し、誰が費用を負担し、どの国で勤務し、その報酬がどの勤務期間に対応しているのか」という観点から確認することが重要です。


9.海外勤務経験者・海外からの転職者に関する税務

海外から日本法人に転職してくる従業員については、日本に入国した日だけを基準として課税関係を判断するのではなく、日本の所得税法上の居住者・非居住者の区分を確認する必要があります。

特に、同一年度の中で海外勤務と日本勤務が混在する場合には、給与のどの部分が日本の課税対象となるかを整理する必要があります。

また、外国人従業員が日本法人に転職する前に海外企業から受け取っていた給与については、単純に「その年に受け取った給与だから日本の年末調整に含める」と判断することはできません。

前職給与の年末調整への算入は、日本の所得税法上の給与としての取扱いや、前職での扶養控除等申告書の提出状況、源泉徴収票による確認などを踏まえて判断します。

海外勤務期間を含む給与や海外法人からの報酬については、国内給与とは異なる論点が生じるため、個別の事実関係に基づく確認が必要です。


10.ストックオプション・株式報酬がある場合

外資系企業の中途採用者については、海外親会社からRSU、ストックオプションその他の株式報酬が付与されている場合があります。

このような報酬については、現金給与とは異なるタイミングで課税関係が発生する可能性があるため、付与日、権利確定日、株式取得日、売却日などを整理することが重要です。

また、海外親会社から直接株式報酬を受け取っている場合、日本法人が給与計算上把握していないケースもあるため、入社時に報酬制度の内容を確認しておくことが望まれます。

特に外国人従業員や海外グループ会社から転籍・出向してきた従業員については、日本勤務に対応する株式報酬が存在しないかを確認することが、給与課税の漏れを防ぐうえで重要です。


11.中途採用時に会社が確認すべき資料

中途採用者の税務手続を適切に行うためには、入社時に必要な情報を整理しておくことが重要です。

基本的には、扶養控除等申告書、前職の源泉徴収票、扶養親族等に関する情報、住民税の特別徴収に関する情報などを確認します。

外国人従業員については、これに加えて、日本での居住状況、海外での居住状況、日本での勤務開始日、海外法人との雇用関係、海外親会社からの給与・賞与・株式報酬の有無などを確認することが望まれます。

特に外資系企業では、日本法人の給与台帳だけでは従業員の全世界ベースの報酬を把握できない場合があります。そのため、入社時のTax Questionnaireなどを活用し、海外給与や株式報酬の有無を確認する仕組みを整備することも有効です。


12.中途採用における税務管理のポイント

中途採用者の税務については、「入社時」「毎月の給与計算」「年末調整」の3段階に分けて管理すると実務上整理しやすくなります。

入社時には、扶養控除等申告書、前職の源泉徴収票、住民税、居住者・非居住者の区分、海外給与や株式報酬の有無を確認します。

毎月の給与計算では、源泉徴収税額、社会保険料、住民税などを適切に処理します。

年末調整では、前職給与を含める必要があるか、前職の源泉徴収票による確認ができているか、各種所得控除の申告書が提出されているかなどを確認します。

また、外国人従業員については、給与所得の源泉徴収票の交付についても注意が必要です。国税庁は、国内に住所または1年以上の居所を有する居住者である外国人従業員も、源泉徴収票の交付対象となる「すべての受給者」に含まれるとしています。


おわりに

中途採用に伴う税務処理では、単に入社後の給与から源泉所得税を計算するだけではなく、前職給与、年末調整、住民税、居住者・非居住者の判定、海外給与、株式報酬など、複数の論点を確認する必要があります。

特に外資系企業や外国人従業員の採用では、海外親会社からの給与・賞与・株式報酬や、海外勤務期間に対応する報酬などが関係することがあり、通常の国内企業の中途採用よりも税務上の確認事項が増える傾向があります。

中途採用者の税務処理を適切に行うためには、採用時点で必要な情報を収集し、給与計算・年末調整・住民税・国際税務を一体的に確認できる体制を整えることが重要です。

MOCHIZUKI & associatesでは、外資系企業や外国人従業員を雇用する日本法人について、給与・源泉所得税、年末調整、外国人従業員の税務、海外親会社との報酬関係など、国際税務の観点を踏まえた税務サポートを行っています。


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