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【外資系企業向け】日本税務上の減価償却の処理

2026年2月6日 by
Liying Huang
はじめに

日本税務における減価償却制度は、企業の資産取得コストを合理的に期間配分するための基本的な仕組みである。しかし、国際的に事業を展開する外資系企業にとっては、会計基準(IFRS・US GAAP)との相違や、日本独自の税務ルールが実務上の負担となることが多い。

特に、日本では税務上認められる償却方法や耐用年数が法律および通達によって厳格に定められており、会計上の処理をそのまま税務に反映できないケースが頻発する。

本稿では、日本税務上の減価償却の基本構造を整理した上で、外資系企業が日本拠点で実務対応を行う際に押さえるべきポイントを体系的に解説する。


1. 日本税務における減価償却制度の基本構造

日本税務において、減価償却は法人税法および法人税法施行令に基づいて規定されている。減価償却の対象となるのは、事業の用に供する有形固定資産および無形固定資産であり、棚卸資産や土地は原則として対象外である。

税務上の減価償却は、あくまで「損金算入の可否と限度額」を定める制度であり、会計上の減価償却とは独立して考える必要がある。すなわち、会計上いかなる償却を行っていても、税務上認められる償却限度額を超える部分は損金不算入となる。

この点は、会計と税務の乖離が生じやすい日本税務の特徴の一つであり、国際的な会計基準に慣れた外資系企業ほど注意が必要である。


2. 償却方法と法定耐用年数の考え方

日本税務では、原則として資産の種類ごとに「法定耐用年数」が定められている。これらは国税庁が公表する耐用年数表に基づいて判断され、企業が独自に耐用年数を設定することは認められていない。

償却方法については、取得時期により選択可能な方法が異なる。有形固定資産については、原則として定額法が適用されるが、一定の手続きを行うことで定率法を選択することも可能である。ただし、建物および建物附属設備については定額法のみが認められている。

無形固定資産については、原則として定額法による償却となり、ソフトウェアについては用途に応じて耐用年数が区分される。

外資系企業の場合、本国で使用している会計耐用年数や償却方法を前提に管理を行っていることが多く、日本税務上の耐用年数との差異が一時差異として発生する点を意識する必要がある。


3. 少額資産・一括償却資産の税務上の取扱い

日本税務には、実務負担を軽減するための特例として、少額資産に関する特別な取扱いが存在する。

取得価額が10万円未満の資産については、取得時に全額損金算入することが可能である。また、10万円以上20万円未満の資産については、「一括償却資産」として3年間で均等償却する方法を選択できる。

さらに、中小企業等に該当する法人については、30万円未満の少額減価償却資産を取得時に全額損金算入できる特例があるが、外資系企業の多くはこの制度の適用対象外となる点に注意が必要である。

これらの制度は会計処理との乖離が生じやすく、税務申告時の調整や固定資産管理台帳の整備が重要となる。


4. 会計基準との相違と税務調整の実務

IFRSやUS GAAPでは、資産の経済的使用可能期間に基づいて耐用年数を設定し、構成要素ごとに償却を行うことが一般的である。一方、日本税務では法定耐用年数が優先され、構成要素分解も限定的にしか認められていない。

このため、会計上の減価償却費と税務上の損金算入額との間に差異が生じ、申告調整が必要となる。具体的には、税務上の償却限度額を超える会計償却費は、申告書上で加算調整を行う。

外資系企業では、日本拠点の決算数値をグループ連結用に調整する一方、日本の法人税申告用に別途税務調整を行う体制が求められる。


5. 税務調査における減価償却のチェックポイント

税務調査において、減価償却は頻繁に確認される論点の一つである。特に、資産区分の誤り、耐用年数の誤適用、償却開始時期の判断ミスは否認リスクが高い。

また、海外本社で一括購入した資産を日本拠点で使用している場合、その取得価額の算定根拠や配賦方法について合理性が求められる。単に本社の会計データを流用しているだけでは、税務上問題視される可能性がある。

固定資産台帳、契約書、請求書、社内稟議資料などを整合的に管理し、税務調査時に説明可能な状態を維持することが重要である。


6. 外資系企業における実務対応のポイント

外資系企業が日本税務上の減価償却を適切に管理するためには、会計と税務を明確に切り分けた運用が不可欠である。日本税務専用の固定資産管理ルールを整備し、法定耐用年数に基づく償却管理を行うことが望ましい。

また、グループ会計との調整を前提とした内部プロセスを構築し、日本独自の税務調整が属人化しない体制を整えることが、長期的なコンプライアンス確保につながる。


7. まとめ

日本税務上の減価償却は、制度自体は明確であるものの、会計基準との相違や独自ルールの多さから、外資系企業にとっては実務負担が大きい分野である。

法定耐用年数、償却方法、少額資産の取扱い、税務調整の考え方を体系的に理解し、日本拠点としての適切な運用体制を構築することが重要である。

減価償却は単なる会計処理ではなく、税務リスク管理の観点からも戦略的に取り組むべきテーマであると言える。


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Liying Huang 2026年2月6日
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