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酒類等の製造場・販売場

― 移転許可申請および免許取消申請の実務ガイド ―
はじめに

日本では、酒類(アルコール飲料)の製造や販売を行うには、国税庁(所轄税務署)による「免許」または「許可」が必須です。

これらの免許は、酒税法および関係政令に基づき厳格に管理されており、事業者が酒類の製造場や販売場を移転する場合、または事業を廃止する場合には、所定の手続きを経て「移転許可申請」または「免許取消申請」を行う必要があります。

この申請手続きは、単なる住所変更や設備移転ではなく、税法上の「酒類免許の管理」に直結する重要なプロセスです。特に外資系企業や日本に進出した海外ブランドにとっては、製造拠点・販売拠点の変更が国税当局の許可対象となる点を十分に理解しておく必要があります。

本稿では、酒類等の製造場・販売場の移転および免許取消に関する申請書類や実務上の注意点を、国際税務および法令順守(コンプライアンス)の観点から整理します。


1. 酒類製造・販売業における免許制度の位置づけ

酒税法において、酒類の製造・販売は「免許制」とされており、免許を持たずに酒類の製造や販売を行うことは法律上認められていません。

免許の種類には、清酒、焼酎、ビール、果実酒、ウイスキーなどの製造免許のほか、卸売・小売・通信販売などの販売免許があります。

この免許は、製造場や販売場の所在地・設備・事業内容に紐づいて発行されるため、

事業者が移転や統合を行う際には、単に所在地を変更するだけではなく、新しい場所について再度免許または移転許可を取得する必要があります。

移転許可が必要となるケースとしては、

  • 製造設備を別の建物または敷地へ移す場合
  • 販売店舗を別の場所に移転する場合
  • 既存の営業拠点を統合・縮小する場合
    などが挙げられます。

一方、事業を廃止する場合や撤退する場合には、所轄税務署に対して免許取消申請を行う義務があります。

これは、免許情報を最新状態に保ち、税務当局による酒税管理の適正性を担保するための仕組みです。


2. 移転許可申請の概要と提出書類

酒類等の製造場・販売場を移転する場合には、「移転許可申請書(CC1-5126)」を中心に、複数の添付資料を提出する必要があります。

申請は、移転先の所在地を管轄する税務署へ提出し、承認後に許可証が交付されます。

提出書類には、以下のようなものが含まれます(令和6年現在の国税庁標準様式に基づく)。

  1. 移転許可申請書(CC1-5126)
     移転に関する基本事項(移転理由・日程・新所在地など)を記載。
  2. 販売業免許申請添付書類 1~3
     (1) 移転先の状況、(2) 建物の配置図、(3) 事業の概要を説明する書類。
  3. 土地および建物の登記事項証明書
     移転先の所有者情報・利用権限を確認するために必要。
  4. 土地・建物・設備等が賃借物の場合の賃貸借契約書の写し
     賃貸物件であれば、契約書の写しを添付。
  5. 移転許可申請チェック表(CC1-5104-2(7))
     申請書の不備を防ぐためのチェックリスト。
  6. 建物等の建物図面・周辺図
     新しい販売場や製造場の位置関係を示す図面を添付。
  7. 建物使用承諾書
     所有者以外が使用する場合、所有者の承諾を示す書面。

これらの書類を整備し、担当税務署の酒税指導官による確認を経て許可が下ります。

特に、移転理由や設備内容の記載が不十分な場合は、補足資料の提出を求められることがあります。


3. 免許取消申請の概要と提出書類

酒類製造・販売業を廃止する場合、または免許を返納する場合には、免許取消申請書(CC1-5136)を提出します。

この申請は、事業終了後速やかに行う必要があり、酒税法上の義務として定められています。

提出書類は次のとおりです。

  1. 免許取消申請書(CC1-5136)
     免許番号、廃止理由、廃止日を明記。
  2. 販売業免許申請添付書類次票 2
     現在所持している酒類の数量や処分方法を明記。
  3. 印鑑証明書または法人登記事項証明書
     申請者の本人確認・法人資格確認を目的とする。
  4. その他必要に応じた書類
     設備の撤去報告書や在庫廃棄証明書など。

この申請を怠ると、税務署上では「休眠状態の免許」として残り続け、後日指導や是正勧告を受けるリスクがあります。

また、免許取消後に新規で酒類販売を再開する場合は、改めて免許申請手続きが必要になります。


4. 外資系企業・海外ブランドが注意すべきポイント

日本で酒類事業を展開する外資系企業や海外ブランドにとって、これらの免許手続きは国際税務およびコンプライアンスの観点から特に重要です。

まず、免許の主体(名義人)は、日本国内の法人または代表者でなければならず、外国法人単体では申請できません。

そのため、日本法人または日本支店名義での申請が前提となります。

また、移転先の建物や設備が賃貸物件である場合、賃貸契約内容が酒類製造・販売に対応していること(用途制限がないこと)を確認する必要があります。

この点は、外資系企業が日本でオフィス移転や倉庫変更を行う際に見落としがちな部分です。

さらに、移転に伴って税務上の管轄署が変更される場合には、法人税・消費税・源泉所得税など他の税務手続きとの整合性にも注意が必要です。

国税庁の電子申請(e-Tax)を活用することで、これらの届出を一元的に行うことが可能です。


5. まとめ

酒類の製造・販売に関する免許は、単なる営業許可ではなく、酒税法に基づく厳格な税務管理制度の一部です。

移転や廃止の際には、法令に沿った申請書類の提出が求められ、書類の不備や遅延は営業停止や再申請のリスクを伴います。

特に外資系企業においては、日本独自の制度や税務手続きの理解が不可欠です。

移転や撤退を検討する段階で、税務専門家や行政書士と連携し、事前準備を進めることが成功の鍵となります。

OdooなどのERPシステムを導入している企業であれば、免許情報や申請管理をデジタル化することで、書類管理や期限管理を効率化できます。

DX時代においては、税務行政のデジタル化と連携したシステム運用こそが、グローバル企業の競争力強化に直結します。

日本での酒類事業に関わる全ての事業者は、「免許の更新・移転・取消」が単なる事務手続きではなく、税務・法務・経営の信頼性を支える重要なプロセスであることを理解し、確実な対応を行うことが求められます。

KAZUHISA MOCHIZUKI 2025年11月15日
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