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「183日ルール」 同じ「183日」でも数え方が違う?

日本・中国・米国の国内法と租税条約における滞在日数
2026年9月17日 by
「183日ルール」 同じ「183日」でも数え方が違う?
KAZUHISA MOCHIZUKI


はじめに

国際税務では、「183日」という日数が居住者判定や短期滞在者免税の場面で頻繁に登場します。しかし、同じ183日であっても、何のための183日なのか、また入国日・出国日をどのように数えるのかは、各国の国内税法と租税条約によって異なります。特に日本、中国、米国を行き来する個人については、この違いを正確に理解しておくことが重要です。


まず結論 ― 入国日・出国日はどう数えるのか

制度入国日出国日基本的な考え方
日本国内法の居住者判定一般的な183日基準は存在しない
中国国内法の183日判定原則として含めない原則として含めない中国国内に24時間滞在した日のみ1日として計算
米国国内法のSubstantial Presence Test原則として含める原則として含めるその日の一部でも米国内に存在すれば原則1日
一般的な租税条約上の183日判定原則として含める原則として含めるPhysical presence methodにより一日の一部でも原則1日

このように、「183日」という同じ表現が使われていても、その日数の数え方は必ずしも同じではありません。特に中国国内法では24時間ルールが採用されているため、通常の入国日および出国日は居住日数に含まれない点が特徴です。


中国国内法 ― 入国日・出国日は通常カウントしない

中国個人所得税法上、中国国内に住所を有しない個人については、一暦年に中国国内に183日以上居住したかどうかが税務上重要な判定要素となります。

この滞在日数について、中国では、その日に中国国内に24時間滞在した場合に1日として計算し、24時間未満の滞在日は居住日数に含めないという考え方が採用されています。したがって、通常の入国日は入国前の時間を国外で過ごしており、出国日も出国後の時間を国外で過ごすため、いずれも24時間中国国内に滞在した日には該当せず、原則として居住日数に含まれません。

例えば、2026年1月1日に中国へ入国し、2026年7月2日に中国から出国した場合、暦上は入国日から出国日まで183日ありますが、中国国内法上の居住日数としては、原則として1月2日から7月1日までの181日として計算されます。

したがって、中国の個人所得税における183日判定では、単純にパスポート上の入国日から出国日までの日数を計算するだけでは正確な結果にならない可能性があります。


米国国内法 ― 入国日・出国日とも原則としてカウント

米国では、外国人が米国税務上の居住者に該当するかどうかを判断する基準の一つとして、Substantial Presence Test(SPT)が設けられています。

SPTでは、原則として、当年に少なくとも31日米国内に滞在していることを前提に、当年の米国滞在日数の100%、前年の米国滞在日数の3分の1、前々年の米国滞在日数の6分の1を合計し、その合計が183日以上となるかどうかを判定します。

この計算では、原則として、その日の一部でも米国内に物理的に存在していれば1日として数えます。したがって、通常は、入国日も1日、出国日も1日としてカウントします。

もっとも、米国内に存在したすべての日が必ずSPTの日数に含まれるわけではありません。例えば、国外の二地点間を移動するため24時間未満米国を通過した日、一定の学生、教師、研修生等について米国税法上の「exempt individual」に該当する期間、一定の医療上の理由による滞在などについては、日数計算から除外される場合があります。

また、SPTを満たした場合であっても、当年の実際の米国滞在日数が183日未満であり、外国にtax homeが存在し、その外国との関係が米国よりも密接であるなど一定の要件を満たす場合には、Closer Connection Exceptionにより米国非居住者として扱われる可能性があります。

したがって、米国における「183日」は、単純に当年だけの滞在日数を数える制度ではなく、複数年度の滞在日数を加重して判定する独特の仕組みとなっています。


日本国内法 ― 一般的な「183日ルール」は存在しない

日本の所得税法では、国内に住所を有する個人、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人が、原則として居住者とされます。

ここでいう「住所」とは生活の本拠を意味し、単に日本に何日滞在したかだけで判断されるものではありません。住居、職業、家族の所在、資産その他の客観的事実を総合的に考慮して、日本に生活の本拠があるかどうかが判断されます。

したがって、日本の国内法には、「年間183日以上日本に滞在すれば居住者となり、183日未満であれば非居住者になる」という一般的な183日ルールは存在しません。

なお、「引き続き1年以上の居所」を有するかどうかを判定する際には期間計算が必要となりますが、この場合も183日基準とは異なります。この点で、日本の居住者判定は、中国や米国における滞在日数を中心とした制度とは基本的な考え方が異なります。


租税条約上の183日 ― 入国日・出国日は原則として両方カウント

一方、租税条約における給与所得の短期滞在者免税では、「183日」という基準が広く使用されています。

典型的な租税条約では、勤務先国における滞在が183日を超えないこと、給与が勤務先国の居住者でない雇用主から支払われること、給与が勤務先国に所在する恒久的施設等によって負担されないことなどを満たす場合に、一定の給与所得について勤務先国での課税が免除される仕組みが設けられています。

この183日の計算では、一般にphysical presence method、すなわち物理的にその国に滞在した日数を基礎とする考え方が採用されます。この方法では、その日の一部でもその国に滞在していれば原則として1日として数えるため、通常は入国日および出国日の双方を滞在日数に含めます

例えば、2026年1月1日に入国し、2026年7月2日に出国した場合、租税条約上の滞在日数としては、原則として1月1日から7月2日までの183日として計算されます。

その結果、まったく同じ滞在期間であっても、中国国内法上は181日、租税条約上は183日となるケースが生じます。したがって、国内法上の居住者判定と租税条約上の短期滞在者免税の判定について、同じ滞在日数をそのまま使用することはできません。


「183日をどの期間について数えるか」も条約によって異なる

さらに注意が必要なのは、183日を数える対象期間自体も租税条約によって異なるという点です。

条約によっては、一暦年、すなわち1月1日から12月31日までの滞在日数を基準とするものがありますが、別の条約では、一定の課税年度を基準とする場合や、当該課税年度に開始または終了する任意の12か月間を基準とする場合があります。

この違いは実務上非常に重要です。例えば、ある年の7月から翌年6月まで継続して勤務した場合、各暦年では183日以下であったとしても、「任意の12か月間」で判定する条約では183日を超える可能性があります。

したがって、実務では単に「183日を超えたか」だけを見るのではなく、どの法律または租税条約に基づく183日なのか、何の判定のための183日なのか、入国日・出国日を含めるのか、さらに暦年、課税年度、任意の12か月間のいずれを基準とするのかを確認する必要があります。


国内法と租税条約の183日は別々に判定する必要がある

実務で特に注意したいのは、国内法における居住者判定のための日数と、租税条約における短期滞在者免税のための日数は、それぞれ別の目的を持つという点です。

例えば、中国国内法では183日未満であるため一定の非居住者としての取扱いが適用される場合であっても、同じ滞在期間について租税条約上は183日とカウントされ、短期滞在者免税の要件を満たさない可能性があります。

逆に、国内法上すでに居住者と判定される場合であっても、他国との関係で双方の国内法上の居住者となった場合には、租税条約上の居住者条項、いわゆるtie-breaker ruleによる判定が別途必要になる場合があります。

このため、「183日以下だから税金はかからない」「183日を超えたから居住者になる」といった形で単純に判断することは適切ではありません。


まとめ

国際税務では「183日ルール」という言葉が頻繁に使われますが、世界共通の一つの183日ルールが存在するわけではありません。

中国国内法では、中国国内に24時間滞在した日のみを原則として1日として計算するため、通常の入国日・出国日は居住日数に含まれません。これに対し、米国のSubstantial Presence Testでは、その日の一部でも米国内に物理的に存在していれば原則として1日として扱われるため、入国日・出国日の双方が通常カウントされます。日本国内法には、そもそも一般的な183日居住者基準はなく、住所または1年以上の居所を中心として居住者判定が行われます。

また、租税条約上の短期滞在者免税における183日については、一般にphysical presence methodが用いられ、入国日・出国日の双方が原則としてカウントされます。さらに、183日を数える期間についても、暦年、課税年度、任意の12か月間など条約ごとに違いがあります。

海外赴任、複数国勤務、短期出張が多い役職員については、単一の「滞在日数表」で管理するのではなく、各国国内法上の居住者判定用の日数と、租税条約上の短期滞在者免税判定用の日数を分けて管理することが実務上重要です。

※本稿は一般的な制度の概要を説明するものです。実際の居住者判定および租税条約の適用にあたっては、対象国、対象年度、滞在目的、在留資格、雇用関係、給与の支払・負担関係および適用される租税条約の具体的な規定を個別に確認する必要があります。


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