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在留資格と税務上の居住者区分は同じではない―外国人の日本税務で確認すべきポイント

就労ビザ、永住者、非永住者、海外所得、住民税、相続・贈与税まで、在留資格と税務の関係を整理
2026年9月18日 by
在留資格と税務上の居住者区分は同じではない―外国人の日本税務で確認すべきポイント
KAZUHISA MOCHIZUKI


在留資格と税務上の居住者区分は別の制度

日本に滞在する外国人について、「就労ビザを持っているから日本の税務上の居住者になる」「永住者だからすべての海外所得が日本で課税される」「短期滞在だから日本では税金がかからない」と理解されることがあります。しかし、これらは必ずしも正しくありません。

日本の在留資格は、出入国管理及び難民認定法に基づき、その外国人が日本でどのような活動を行うことができるか、またどのような身分または地位に基づいて日本に在留できるかを定める制度です。例えば、「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「経営・管理」「留学」「家族滞在」などは一定の活動を前提とした在留資格であり、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」は身分または地位に基づく在留資格です。

これに対し、日本の所得税法上の「居住者」「非居住者」は、所得税の課税範囲を決定するための税法上の区分です。したがって、在留カードに記載された在留資格と所得税法上の居住者区分は、原則として別々に判定する必要があります。

用語主な制度主な意味
在留資格入管法日本で認められる活動または身分・地位
居住者・非居住者所得税法日本で課税される所得の範囲を決める税務上の区分
非永住者所得税法一定の外国人居住者について国外源泉所得の課税範囲を限定する区分
一時居住者相続税法一定の在留資格等を有する外国人について相続税・贈与税の課税範囲を判定する際に用いられる区分


就労ビザを持っていても、それだけで税務上の居住者になるわけではない

所得税法上、日本国内に「住所」を有する個人、または現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人は居住者となり、それ以外の個人は非居住者となります。「住所」とは生活の本拠を意味し、日本での住居、職業、家族、資産その他の客観的事実から判断されます。

したがって、「技術・人文知識・国際業務」の3年の在留期間が認められているから、その3年間について自動的に税務上の居住者になるという仕組みではありません。同様に、在留期間が1年であるから最初の1年間は非居住者になるということでもありません。

もっとも、在留資格や雇用契約、予定される日本滞在期間は、税務上の住所の有無を判断する際の重要な事実となることがあります。所得税法上、日本において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合には、日本国内に住所を有するものと推定されることがあります。

例えば、日本企業で勤務するため来日し、雇用契約その他の事情から日本で1年以上継続して勤務・生活することが予定され、日本に住居を設けた場合には、実際の滞在日数がまだ1年に達していなくても、来日当初から日本の税務上の居住者となる可能性があります。

したがって、在留資格そのものが税務上の居住者区分を決めるのではありませんが、在留資格の前提となる活動内容、雇用契約、予定滞在期間その他の事情は、生活の本拠が日本にあるかどうかを判断するための事実の一部となり得ます。


日本には一般的な「183日居住者ルール」はない

外国人の税務については、「日本に183日以上滞在すれば居住者になる」と理解されることがありますが、日本の所得税法にはそのような一般的な183日基準はありません。

日本国内に住所が成立すれば、183日の滞在を待たずに居住者となる可能性があります。一方、日本に183日以上物理的に滞在しているという事実だけで、直ちに所得税法上の居住者に該当すると判断するものでもありません。

なお、租税条約の給与所得に関する短期滞在者免税では183日基準が使用されることがありますが、これは国内法上の居住者判定とは別の問題です。したがって、国内法上の居住者判定と租税条約上の183日判定を混同しないことが重要です。


「永住者」と「非永住者」はまったく別の概念

外国人の日本税務で特に混同されやすいのが、「永住者」と「非永住者」という用語です。

入管法上の「永住者(Permanent Resident)」は、法務大臣から日本での永住を認められた者の在留資格です。これに対して、所得税法上の「非永住者(Non-Permanent Resident)」は在留資格ではなく、所得税の課税範囲を決めるための税務上の概念です。

所得税法上の非永住者とは、居住者のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。

したがって、在留カードに「永住者」と記載されているかどうかだけで、所得税法上の非永住者に該当するかどうかを判断することはできません。また、「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「経営・管理」などの在留資格を有する外国人であっても、日本での居住期間等によっては所得税法上の非永住者以外の居住者となることがあります。

外国人の税務相談では、「どのビザを持っていますか」という質問だけでは不十分であり、日本国籍の有無、今回の来日時期だけでなく、過去10年間の日本における住所・居所の期間を確認する必要があります。


税務上の区分によって課税される所得の範囲が変わる

在留資格そのものではなく、所得税法上の区分によって、日本で課税対象となる所得の範囲が大きく変わります。

非永住者以外の居住者については、原則として日本国内・国外を問わずすべての所得が日本の所得税の対象となります。非永住者については、国外源泉所得以外の所得に加え、国外源泉所得については日本国内で支払われたもの、または国外から日本に送金された金額との関係で一定の範囲が課税対象となります。非居住者については、原則として日本の国内源泉所得のみが日本で課税されます。

このため、外国人が日本に移住した場合には、単に「日本の給与に税金がかかるか」を確認するだけでなく、海外の預金利息、外国法人からの配当、外国不動産の賃貸所得、外国株式の譲渡益その他の海外所得について、日本で申告が必要になるかを確認することが重要です。

特に非永住者については、「海外のお金を日本に送金しなければ海外所得には一切日本税がかからない」という単純なルールではありません。所得が国外源泉所得に該当するか、国外払いか国内払いか、その年に国外から日本への送金があるかなどを合わせて検討する必要があります。


給与を海外から受け取っていても日本で課税されることがある

もう一つよくある誤解が、「給与が海外法人から海外口座に支払われているので日本では課税されない」というものです。

給与所得については、誰がどこから支払ったかだけではなく、どこで勤務を行ったかが重要になります。日本国内で行った勤務に基因する給与は、非居住者の場合でも原則として日本の国内源泉所得に該当します。

例えば、外国企業との雇用契約を維持したまま日本でリモート勤務している場合や、海外親会社から給与の全部または一部を受け取る駐在員については、「給与が外国から支払われている」という事実だけで日本の課税関係を判断することはできません。

一方、適用される租税条約の短期滞在者免税の要件を満たす場合には、日本国内で行った勤務に対応する給与について日本での課税が免除される可能性があります。ただし、その場合も183日基準だけではなく、雇用主や給与負担者など、各条約に定められたその他の要件を確認する必要があります。

したがって、給与の振込口座が海外にあることや、海外法人が給与を送金していることだけで、日本での課税の有無が決まるわけではありません。


入国・出国の年は税務上のStatusが年の途中で変わることがある

日本の所得税における居住者・非居住者判定は、必ずしも1月1日から12月31日まで同じStatusが継続するとは限りません。

例えば、日本で生活していた者が1年以上の予定で海外勤務のため出国する場合には、その後は日本国内に住所を有しないものと推定され、所得税法上の非居住者となることがあります。反対に、海外勤務を終了して日本に帰国し、日本に生活の本拠を設けた場合には、その時点から居住者となることがあります。

したがって、入国、帰国、海外赴任、恒久的な出国などがあった年については、1年間すべてを一律に居住者または非居住者として処理するのではなく、いつ税務上のStatusが変化したかを確認し、それぞれの期間について課税所得の範囲を検討する必要があります。


住民税は所得税とは判定時点が異なる

個人住民税については、所得税とは異なり、原則としてその年の1月1日現在の住所が重要になります。個人住民税の所得割は、原則として前年の所得を基礎として計算されます。

そのため、年の途中で日本から出国したとしても、その年の1月1日に日本に住所があれば、その年度の住民税が残ることがあります。反対に、年の途中で日本へ移住した場合には、所得税上はその年から居住者として課税される一方、その年の1月1日に日本に住所がなければ、その年度の通常の所得割等が課税されない場合があります。

したがって、住民税についても、「現在日本に住んでいるか」「在留カードを持っているか」だけではなく、1月1日時点の住所と前年所得との関係を確認する必要があります。


相続税・贈与税では在留資格そのものが重要になることがある

所得税では在留資格と税務上の居住者区分は原則として別の制度ですが、相続税・贈与税では事情が異なります。相続税法には、外国人について「一時居住者」という独自の概念があり、その判定に入管法上の在留資格が直接用いられています。

相続税法上の一時居住者とは、相続開始時に入管法別表第一の在留資格を有し、かつ、相続開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下である者をいいます。贈与税についても、基本的に同様の考え方が採用されています。

入管法別表第一には、「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「経営・管理」「高度専門職」「留学」「家族滞在」など多くの活動資格が含まれます。一方、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」は身分または地位に基づく在留資格であり、別表第二に区分されています。

したがって、相続税・贈与税の課税範囲を検討する場合には、所得税上の居住者・非居住者だけではなく、その外国人が具体的にどの在留資格を有しているか、さらに過去15年間の日本居住歴がどの程度あるかまで確認する必要があります。

もっとも、一時居住者に該当すれば常に国外財産が日本の相続税・贈与税の対象外になるわけではありません。実際の課税範囲は、被相続人または贈与者の居住状況、国籍、日本での過去の居住歴その他の事情によっても変わります。

そのため、海外に多額の資産を保有する外国人については、在留資格の変更や永住許可取得の前後も含めて、相続税・贈与税への影響を個別に確認することが重要です。


税金を正しく申告・納付していることは在留手続にも関係する

ここまで説明したとおり、税務上の居住者区分を直接決めるのは在留資格ではありません。しかし、逆方向、すなわち税務上の申告・納税状況が在留手続に影響することがあります。

在留期間更新許可申請では、在留資格や申請区分等に応じて、住民税の課税証明書・納税証明書その他の所得・納税関係資料の提出が求められる場合があります。したがって、すべての更新申請について一律に同じ税務資料が必要になるわけではありませんが、税務上の所得や納税状況が在留審査上確認されるケースがあります。

特に永住許可申請では、公的義務を適正に履行していることが重要な審査要素となっており、申請区分に応じて複数年分の住民税課税・納税証明書や、一定の国税についての納税証明書などの提出が求められます。

したがって、在留資格と税務上の居住者区分は法律上別の問題であるものの、実務上は完全に切り離されているわけではありません。特に在留期間更新や永住許可を予定している外国人については、所得税・住民税その他の税について適切な申告および納付が行われているかを早めに確認することが重要です。


実務では何を確認すべきか

外国人の日本における税務を検討する際には、在留資格だけから結論を出すのではなく、現在の在留資格と在留期間、日本への入国日および過去の日本滞在歴、日本での住居、勤務先と雇用契約、家族の居住地、給与の支払元と実際の勤務地、日本国外の所得および資産、日本への送金状況、適用可能な租税条約を総合的に確認する必要があります。

とりわけ、「永住者だから必ず全世界所得課税」「就労ビザだから自動的に居住者」「183日未満だから非居住者」「海外口座で給与を受け取っているから日本では非課税」といった一つの事実だけから税務上の結論を出すことは避けるべきです。

まず在留資格と税務上のStatusを別々に整理し、そのうえで、両制度がどこで相互に影響するかを確認する必要があります。


まとめ

日本の在留資格と税務上の居住者区分は、原則として別の制度です。在留資格は、日本で行うことのできる活動や身分・地位を定める入管法上の制度であり、所得税法上の居住者・非居住者は、日本でどの範囲の所得に課税するかを決めるための税務上の制度です。

そのため、就労ビザを持っていること、在留期間が何年であること、あるいは永住者の在留資格を有していることだけで、所得税上のStatusを判断することはできません。一方、在留資格の前提となる活動内容、雇用契約、予定滞在期間その他の事情は、税務上の住所判定を行う際の事実の一部となることがあります。

さらに、相続税・贈与税では一定の在留資格が課税範囲の判定に直接関係し、在留期間更新や永住許可申請では税務上の申告・納税状況が確認されることがあります。

したがって、日本に移住する外国人、日本から海外に赴任する外国人、海外に所得や資産を保有する外国人については、Immigration Status(在留資格)とTax Residency(税務上の居住者区分)をそれぞれ別に判定した上で、両者がどの場面で交差するのかを確認することが、日本の国際個人税務を検討する上で重要です。

※本稿は、日本の在留資格と税務上の取扱いについて一般的な概要を説明するものです。実際の居住者判定、所得税、住民税、相続税・贈与税および在留手続については、本人の国籍、過去の日本滞在歴、在留資格、家族・職業・住居の状況、所得・資産の所在地、送金状況、適用される租税条約その他の個別事情によって取扱いが異なる場合があります。


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