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【外国法人向け】日本の消費税の還付を受けられる?

― 外国企業のための日本VAT還付実務ガイド ―
はじめに

日本市場への参入や日本企業との取引が進む中で、外国法人から頻繁に寄せられる質問の一つが、「外国企業は日本で支払った消費税(Japanese Consumption Tax:JCT)の還付を受けることができるのか」という点です。

展示会や見本市への出展、業務委託、調査活動、資産購入など、日本国内で事業関連の支出が発生すると、日本の消費税が請求されるケースは少なくありません。

結論から言えば、一定の条件を満たす場合には、外国法人であっても日本の消費税の還付(実質的には仕入税額控除による還付)を受けることは可能です。ただし、日本の消費税制度は、欧州のVATリファンド制度とは構造が異なり、「非居住者向け簡易還付制度」が存在しない点に注意が必要です。

本稿では、日本に拠点を持たない外国法人が消費税の還付を受けるための基本的な考え方、実務上の要件、注意点について、国際税務の視点から整理します。


1. 日本における消費税還付の基本構造

日本の消費税制度では、消費税の還付は「還付請求」という独立した制度として存在するのではなく、課税事業者が行う仕入税額控除の結果として還付が生じるという構造になっています。

つまり、日本で消費税の還付を受けるためには、原則として「消費税の申告主体」であることが前提となります。外国法人であっても、日本において課税取引を行い、課税事業者として消費税申告を行う立場にある場合には、日本法人と同様に、支払った消費税を仕入税額として控除し、その結果として還付が発生する可能性があります。

一方で、日本において課税売上が一切なく、単に展示会参加費や調査費用などを支払っただけの場合には、EU型の「非居住者VATリファンド制度」のように、単独で還付請求を行う仕組みは存在しません。この点は、外国企業が最も誤解しやすいポイントです。


2. 外国法人が消費税還付を受けるための前提条件

外国法人が日本の消費税還付を受けるためには、いくつかの実務的な前提条件を満たす必要があります。

第一に重要なのは、日本で消費税の課税事業者として登録されていることです。
日本に恒久的施設(PE)がない外国法人であっても、日本国内で課税取引を行う場合には、消費税の納税義務が生じる可能性があります。その場合、外国法人は「納税管理人」を選任し、日本で消費税の申告・納付を行う体制を整える必要があります。

第二に、支払った消費税が課税取引に直接関連していることが求められます。
例えば、日本国内での役務提供に関連する経費、課税売上を生み出すための仕入、業務上必要な物品購入などは、原則として仕入税額控除の対象となります。一方で、事業と直接関係のない支出や、非課税取引・不課税取引に対応する消費税は控除対象外となります。

第三に、適格請求書(インボイス)を含む証憑の保存が不可欠です。
2023年10月から開始されたインボイス制度の下では、原則として、登録事業者が発行した適格請求書がなければ仕入税額控除を受けることができません。外国法人であっても、この点は日本法人と同様に厳格に求められます。


3. 還付対象となり得る支出と制限事項

外国法人が日本で支払う消費税のうち、還付の対象となり得る代表的な支出には、日本国内での課税仕入に係る各種業務費用があります。たとえば、展示会・見本市への出展費用、業務委託費、システム利用料、課税対象となる物品購入などが該当します。

一方で、交際費的支出や私的性格を有する支出、非課税取引に対応する費用に係る消費税は、原則として還付の対象にはなりません。また、簡易課税制度を選択している場合には、実際に支払った消費税額とは無関係に、みなし仕入率に基づいて計算されるため、実務上、還付が生じにくくなる点にも注意が必要です。

外国法人の場合、「とりあえず登録すれば還付される」という理解は危険であり、事前に取引内容と課税関係を精査することが不可欠です。


4. 還付申告の手続と期限管理

消費税の還付は、通常の消費税確定申告の中で行われます。

課税期間は原則として事業年度単位であり、その期間内の課税売上と仕入税額を集計し、差額として還付額が確定します。注意を要するのは仕入税額の控除または還付はその発生した期間においてのみ認められることです。申告期限を過ぎた場合には、還付を受ける権利自体が失われるわけではありませんが、過年度修正申告となり、還付までの期間が大幅に遅延する可能性があります。また、証憑の不備や取引内容の説明不足がある場合には、税務署からの照会や実地調査につながることもあります。

特に外国法人の場合、日本の税務当局から見て「取引実態が把握しづらい」立場にあるため、申告書と証憑の整合性、取引スキームの説明可能性が極めて重要となります。


5. 実務上の留意点と専門家関与の重要性

外国法人による日本の消費税還付は、制度上は可能であるものの、実務的にはハードルが高い分野です。消費税登録の要否判断、納税管理人の選任、インボイス対応、還付可能性の事前検討など、誤った対応をすると還付を受けられないばかりか、想定外の納税義務が生じるリスクもあります。

そのため、日本で消費税の還付を検討する外国法人は、日本の消費税実務と国際取引に精通した税務専門家の関与を前提に進めることが重要です。適切な事前設計と申告対応を行うことで、コンプライアンスを確保しつつ、不要な税コストを回避することが可能となります。


まとめ

外国法人であっても、日本において課税事業者として消費税申告を行う立場にある場合には、日本の消費税還付を受けることは可能です。ただし、日本には非居住者向けの簡易還付制度はなく、還付はあくまで消費税申告を通じて実現される点を正しく理解する必要があります。

日本市場での事業活動を検討する外国法人にとって、消費税の還付可否はキャッシュフローに直結する重要な論点です。制度の表面的な理解にとどまらず、実務に即した対応を行うことが、安定した日本ビジネス運営の鍵となります。


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KAZUHISA MOCHIZUKI 2026年1月17日
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