在留資格と社会保険加入資格は同じものではない
日本で生活する外国人について、「就労ビザがなければ社会保険には加入できない」「働いていない外国人は日本の健康保険や年金には入れない」と理解されることがあります。しかし、このような理解は必ずしも正しくありません。
外国人が日本でどのような活動を行うことができるかは、出入国管理及び難民認定法に基づく在留資格によって決まります。一方、健康保険、厚生年金保険、国民健康保険、国民年金への加入は、それぞれの社会保険関係法令に基づいて判定されます。
したがって、「日本で働くことができるか」という入管法上の問題と、「日本の社会保険制度に加入するか」という社会保険法上の問題は、原則として別々に判定する必要があります。
例えば、「留学」や「家族滞在」は原則として就労を目的とする在留資格ではありませんが、日本国内に住所を有するなど一定の要件を満たせば、国民健康保険や国民年金の対象となることがあります。また、会社員である配偶者の健康保険上の被扶養者となることもあります。
会社の健康保険・厚生年金では、まず雇用関係を確認する
日本の健康保険・厚生年金保険の適用事業所に常時使用される者は、原則として国籍に関係なく被保険者となります。日本年金機構も、外国人従業員について、適用事業所に常時使用される場合には国籍、性別、賃金額等にかかわらず健康保険・厚生年金保険の対象となることを明示しています。
もっとも、外国人を実際に雇用する場合には、その外国人が入管法上その業務に適法に従事できることを別途確認する必要があります。在留資格が「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「経営・管理」などの場合には、その在留資格で認められた活動の範囲内で就労する必要があります。「留学」や「家族滞在」の場合には原則として就労は認められていませんが、資格外活動許可を受けることで、その許可の範囲内で就労することができます。包括的な資格外活動許可の場合、原則として週28時間以内という制限があります。
一方、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」などについては、その身分または地位に基づき在留する資格であり、一般的な就労資格のような活動内容による就労制限はありません。
したがって、厳密には「就労ビザを持っているか」ではなく、その外国人が入管法上当該業務に従事することが認められているかを確認し、その上で健康保険・厚生年金保険の加入要件を満たしているかを別途判定することになります。
社会保険加入が就労を認めるわけではない
ここで両制度の順序を混同しないことも重要です。
健康保険・厚生年金保険への加入手続が行われたことによって、その外国人の就労が入管法上認められることになるわけではありません。社会保険加入資格と在留資格上の就労資格は、それぞれ別の法律に基づく問題です。
したがって、企業が外国人を採用する場合には、まず在留カード等により、その外国人が予定する業務に従事できる在留資格または資格外活動許可を有しているかを確認する必要があります。その後、雇用条件、勤務時間、勤務日数、事業所の適用状況等に基づき健康保険・厚生年金保険への加入を判定することになります。出入国在留管理庁も、外国人採用時には在留資格および資格外活動許可の有無等を確認するよう案内しています。
「就労できない在留資格」でも国民健康保険には加入し得る
会社の健康保険に加入していない外国人については、国民健康保険への加入関係を確認する必要があります。
国民健康保険では、日本国内に住所を有する者で、会社の健康保険等の他の公的医療保険に加入しておらず、その他の適用除外に該当しない者は原則として被保険者となります。このルールは外国人にも適用されます。したがって、就労可能な在留資格を持っていること自体は国民健康保険の加入要件ではありません。
例えば、「家族滞在」や「留学」の在留資格で日本に居住し、会社の健康保険の被保険者または被扶養者となっていない外国人については、国民健康保険の対象となることがあります。
外国人については、原則として中長期在留者等が対象となりますが、在留期間が3か月以下の場合でも、一定の在留資格について契約書その他の客観的資料から3か月を超えて日本に滞在すると認められる場合には、国民健康保険の対象となることがあります。一方、「短期滞在」、一定の医療滞在目的や長期観光目的の「特定活動」などについては適用除外があります。
つまり、「日本で働けるか」と「日本の公的医療保険に入るか」は異なる問題です。
就労していなくても国民年金の対象になることがある
国民年金についても同じです。
日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者で、厚生年金保険に加入していない者は、原則として国民年金の第1号被保険者または第3号被保険者となります。このルールは国籍を問わず、外国人にも適用されます。
したがって、例えば「留学」の在留資格を持つ学生や、「家族滞在」で日本に居住している配偶者についても、就労していないことだけを理由として国民年金の対象外になるわけではありません。
会社員等の厚生年金被保険者である配偶者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者については、一定の要件を満たせば国民年金第3号被保険者となります。それ以外の場合には、第1号被保険者として国民年金への加入が必要となる場合があります。
ただし、医療滞在や長期観光を目的とした一定の「特定活動」の在留資格を有する外国人などについては、国民年金の適用除外があります。
「家族滞在」と健康保険上の「被扶養者」は別の概念
在留資格と社会保険との関係で特に混同されやすいのが、「家族滞在」と健康保険上の「被扶養者」です。
「家族滞在」は入管法上の在留資格であり、一定の在留資格を有する外国人の扶養を受ける配偶者または子が日本で生活するための資格です。一方、健康保険上の被扶養者は、健康保険法上の要件によって判定されます。
健康保険上の被扶養者については、原則として日本国内に住所を有し、被保険者によって主として生計を維持されていることなどが要件となります。また、収入等についても社会保険上の認定基準があります。
したがって、在留資格が「家族滞在」であるから自動的に健康保険上の被扶養者になるわけではありません。反対に、健康保険上の被扶養者として認定されていることだけで、入管法上の「家族滞在」の要件を満たすことになるわけでもありません。
Immigration DependentとHealth Insurance Dependentは、似た概念に見えても全く別の制度上のStatusです。
留学生がアルバイトをすると社会保険に入るのか
留学生についても、入管法上の就労資格と社会保険加入資格を分けて考える必要があります。
「留学」の在留資格では、原則として就労することはできませんが、資格外活動許可を取得すれば、一般的には週28時間以内の範囲でアルバイト等を行うことができます。
ただし、資格外活動許可を取得して働いているからといって、直ちに健康保険・厚生年金保険への加入義務が生じるわけではありません。健康保険・厚生年金保険については、通常の労働者の所定労働時間・日数との比較や、短時間労働者に対する適用要件などを別途確認する必要があります。
特に短時間労働者については、週所定労働時間、企業規模、学生該当性その他の要件によって適用が決まります。現行制度では「学生ではないこと」が短時間労働者に係る一定の適用要件となっているため、留学生の場合にはこの点についても注意が必要です。なお、短時間労働者に対する社会保険の適用範囲については法改正が継続しているため、実際の採用時点における最新の加入要件を確認する必要があります。
在留資格別に見る基本的な考え方
| 主な在留資格・状況 | 就労の考え方 | 社会保険の基本的な考え方 |
|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務等 | 在留資格で認められる業務について就労可 | 雇用条件等を満たせば健康保険・厚生年金 |
| 永住者・日本人の配偶者等・定住者等 | 原則として活動内容による就労制限なし | 雇用条件等を満たせば健康保険・厚生年金 |
| 留学 | 原則就労不可。資格外活動許可により一定範囲で可 | 就労状況等に応じて判定。就労しなくても国保・国民年金の対象となり得る |
| 家族滞在 | 原則就労不可。資格外活動許可により一定範囲で可 | 被扶養者、第3号被保険者または国保・国民年金を個別判定 |
| 短期滞在 | 原則就労不可 | 国民健康保険等も原則として対象外 |
| 特定活動 | 指定された活動内容による | 指定内容、居住状況、雇用関係等により個別判定 |
この表からも分かるように、就労資格の有無と社会保険加入の有無は一対一には対応していません。
海外から日本への派遣では社会保障協定も確認する
外国企業から日本へ派遣される駐在員については、通常の日本の社会保険加入要件に加えて、派遣元国と日本との間に社会保障協定があるかどうかを確認する必要があります。
社会保障協定では、原則として就労国の社会保障制度を適用しつつ、一定の一時派遣者については派遣元国の社会保障制度への加入を継続し、日本の対象制度への加入を免除する仕組みが設けられています。多くの協定では5年以内の一時派遣が一つの基準となっていますが、対象となる制度、期間、延長制度等は協定ごとに異なります。
したがって、外国人駐在員については、日本で働いているから必ず日本の厚生年金等に加入すると一律に判断することも適切ではありません。派遣元国、日本での雇用関係、予定派遣期間、適用される社会保障協定および適用証明書等を確認する必要があります。
在留資格・税務・社会保険は三つの異なるStatusとして考える
外国人が日本で生活・勤務する場合には、少なくとも三つの異なるStatusを区別して考えることが重要です。
第一は、入管法上の**Immigration Status(在留資格)であり、日本でどのような活動を行うことができるかを決定します。第二は、所得税法上のTax Residency(税務上の居住者区分)であり、日本でどの範囲の所得が課税されるかを決定します。第三は、健康保険・年金制度上のSocial Insurance Status(社会保険上の加入資格)**であり、どの社会保険制度に加入するかを決定します。
これらは相互に関連する場合がありますが、同じ判定ではありません。例えば、「家族滞在」で就労していない外国人でも国民健康保険や国民年金の対象となり得ますし、外国から日本に勤務する駐在員が税務上の日本居住者となっていても、社会保障協定によって日本の一定の社会保障制度への加入が免除される場合があります。
したがって、外国人については、「どのビザを持っているか」だけから税務や社会保険の結論を出すのではなく、在留資格、実際の就労・居住状況、社会保険制度上の加入要件をそれぞれ確認することが重要です。
まとめ
外国人の在留資格と日本の社会保険加入資格は、密接に関連する場合はあるものの、法律上は別々の制度です。
会社の健康保険・厚生年金保険に加入する外国人従業員については、まず入管法上予定する業務への就労が認められていることを確認し、その上で勤務先、勤務時間、勤務日数等から社会保険への加入資格を判定します。
一方、就労を認められていない、または就労していない外国人であっても、日本国内に住所を有するなど一定の要件を満たせば、国民健康保険や国民年金への加入対象となることがあります。また、健康保険上の被扶養者や国民年金第3号被保険者となることもあります。
したがって、「就労ビザがある=社会保険加入」「就労ビザがない=社会保険加入不可」という判断は正確ではありません。 入管法上の就労可否と社会保険法上の加入資格をそれぞれ別に確認し、その両方を満たす形で手続を行うことが重要です。
※本稿は、外国人の在留資格と日本の社会保険制度との関係について一般的な概要を説明するものです。実際の取扱いは、在留資格、指定された活動内容、資格外活動許可、雇用契約、勤務時間、勤務先の規模、家族関係、収入、日本国内の住所、派遣元国および社会保障協定等によって異なる場合があります。
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