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日本の固定資産税―海外居住者・外国人が不動産を所有する場合

2026年1月16日 by
日本の固定資産税―海外居住者・外国人が不動産を所有する場合
Liying Huang

はじめに

日本で事業を行う外資系企業にとって、法人税や消費税と比較すると認知度が低いものの、実務上見落としやすい税目の一つが「償却資産税」である。

償却資産税は、土地・建物以外の事業用資産に対して課される地方税であり、法人の規模にかかわらず、一定の資産を保有していれば申告義務が生じる。

特に日本子会社を設立した直後や、日本支店・駐在員事務所の段階では、「法人税の対象にならない=地方税も不要」と誤解されるケースが少なくない。しかし、償却資産税は法人税とは全く異なるロジックで課税されるため、外国法人であっても課税対象となる点に注意が必要である。

本稿では、外資系企業の日本進出担当者や財務・税務責任者向けに、日本の償却資産税の基本構造、申告対象、実務上の留意点について整理する。


1. 償却資産税の基本的な仕組み

償却資産税は、地方税法に基づき、市町村(東京23区は東京都)が課税主体となる固定資産税の一種である。

対象となるのは、事業の用に供される有形固定資産のうち、土地・家屋を除いた「償却資産」である。

税率は原則として一律1.4%であり、各自治体が条例で定める。評価額は、取得価額を基礎として、耐用年数に応じた減価残高方式により算定される。法人税上の減価償却費とは計算方法が異なり、会計上すでに全額費用処理された資産であっても、償却資産税上は課税対象として残る場合がある。

課税の基準日は毎年1月1日であり、その時点で保有している償却資産について、原則として1月31日までに申告を行う必要がある。


2. 外資系企業が課税対象となる理由

償却資産税は「法人の居住性」や「本店所在地」ではなく、「日本国内で事業の用に供されている資産」の存在を基準に課税される。

そのため、以下のようなケースでも課税対象となる。

・日本子会社が保有する事業用設備

・外国法人の日本支店が使用する機械・器具

・日本にPE(恒久的施設)がないと主張している場合でも、日本国内に設置された事業用資産

法人税のPE認定や課税関係とは切り離して判断される点が、外資系企業にとって最も誤解が生じやすいポイントである。


3. 課税対象となる主な償却資産

外資系企業の日本拠点で典型的に問題となる償却資産には、以下のようなものが含まれる。

オフィス家具、パーティション、什器備品

サーバー、ネットワーク機器、業務用PC

製造設備、検査装置、測定機器

内装工事のうち、家屋とならない造作

工具、治具、金型(一定金額以上)

一方で、10万円未満の少額資産で法人税上即時償却したものや、20万円未満の一括償却資産であっても、償却資産税上は原則として申告対象に含まれる点には注意が必要である。


4. 申告実務とよくあるミス

償却資産税は、自治体から課税通知が送付される前に、納税者自らが資産内容を申告する「申告納税方式」である。

外資系企業の日本拠点では、以下のようなミスが頻発する。

設立初年度は申告不要と誤認している

会計帳簿上の固定資産台帳と申告内容が一致していない

本社購入資産を日本拠点で使用しているにもかかわらず申告漏れとなっている

除却・売却済資産の除外漏れ

特に、海外本社が一括購入した設備を日本に持ち込み使用している場合、日本側で取得価額や取得時期を正確に把握できず、評価誤りにつながるケースが多い。


5. 税務調査・自治体対応の実務ポイント

償却資産税についても、自治体による実地調査や書面照会が行われる。

法人税調査ほどの頻度ではないものの、設備投資額が大きい外資系企業や、過去に無申告期間がある場合は調査対象となりやすい。

実務上は、以下の体制整備が重要である。

固定資産台帳と償却資産申告書の定期的な突合

本社・日本拠点間での資産管理ルールの明確化

内装工事・IT投資における課税対象判定の事前整理

除却・移設時の記録保存

これらを平時から整備しておくことで、自治体対応の負担を大幅に軽減できる。


6. 国際税務の視点から見た位置づけ

償却資産税は、移転価格税制やPE課税と直接連動するものではないが、日本における「事業実態」を補足的に把握する情報として、他税目に波及する可能性は否定できない。

特に、設備の設置状況や使用実態は、PE認定や機能・リスク分析の事実認定と整合性が求められるため、国際税務の文脈でも無視できない税目である。


7. 海外居住者の固定資産税―納税通知書・納付・納税管理人

日本国外に居住している場合でも、日本に土地や建物を所有していれば、原則として日本国内の所有者と同様に固定資産税の対象となります。所有者が外国籍であることや海外に居住していること自体によって、固定資産税の基本的な課税方法が変わるわけではありません。

一方、海外居住者については、税額そのものよりも、納税通知書をどこで受け取るか、海外からどのように納付するかといった実務上の問題が生じやすくなります。固定資産税は通常、不動産所在地を管轄する自治体から納税通知書が送付され、その通知に基づいて納付します。納期限、納付回数、海外から利用できる納付方法等は自治体によって異なるため、物件所在地ごとの確認が必要です。

また、日本国外に居住する不動産所有者については、自治体の条例や手続に基づき、日本国内に納税管理人を選任することが求められる場合があります。納税管理人は、所有者に代わって納税通知書その他の書類を受領し、税金の納付等に関する事務を行います。ただし、選任要件、届出様式、送付先の取扱い等は自治体によって異なります。

したがって、日本を離れて不動産を引き続き所有する場合や、海外から日本不動産を取得する場合には、固定資産税・都市計画税の納税通知書を確実に受領し、期限内に納付できる体制をあらかじめ確認しておくことが重要です。


8. 地方税の納税管理人と国税の納税管理人―賃貸不動産を所有する場合

海外居住者が特に注意すべき点として、固定資産税に関する地方税の納税管理人と、所得税等に関する国税の納税管理人は別の制度であることが挙げられます。

固定資産税の納税管理人は、不動産所在地の地方自治体との関係で、納税通知書の受領や納付等を行うためのものです。一方、日本国内の不動産を賃貸することなどにより日本で所得税の確定申告が必要となる場合には、国税について別途納税管理人を定め、所轄税務署への届出等を検討する必要があります。

海外居住者が日本国内の不動産を賃貸して得る所得は、日本の国内源泉所得となり、日本で所得税の確定申告が必要となる場合があります。不動産所得は、原則として賃貸収入から必要経費を控除して計算され、賃貸用不動産に係る固定資産税についても、一定の場合には必要経費として取り扱われます。

また、非居住者が日本国内の不動産の賃貸料を受け取る場合には、一定の例外を除き、20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されることがあります。この源泉徴収税額は必ずしも最終的な税額ではなく、日本で確定申告を行うことにより、実際の所得税額との精算が行われることがあります。

したがって、海外から日本不動産を所有している場合には、「固定資産税の通知・納付を誰が管理するか」という地方税上の問題と、「不動産所得の申告を誰が行うか」という国税上の問題を分けて確認することが重要です。


9. 海外から日本不動産を所有する場合の税務管理

海外居住者にとって、固定資産税は日本の不動産保有に関する税務の一部にすぎません。賃貸している場合には所得税の確定申告、売却する場合には譲渡所得課税や一定の場合の源泉徴収、相続・贈与が生じる場合には相続税・贈与税など、不動産の利用方法や取引内容によって別の税務上の問題が生じます。

そのため、海外から日本不動産を所有する場合には、まず不動産所在地の自治体に登録されている所有者情報や納税通知書の送付先を確認し、固定資産税・都市計画税を確実に納付できる状態にしておくことが必要です。そのうえで、地方税の納税管理人の選任が必要か、賃貸収入について日本で所得税申告が必要か、国税について納税管理人を置く必要があるかなどを確認します。

さらに、将来の売却を予定している場合には、取得費、減価償却、譲渡所得、売却代金からの源泉徴収等についても事前に確認しておくことが望まれます。

固定資産税は比較的単純な保有税に見えますが、海外居住者にとっては、日本における不動産税務全体を確認する入口となる税目といえます。固定資産税の納税管理だけを独立して考えるのではなく、不動産所得の申告、源泉徴収税額の精算、将来の売却まで含めて継続的に管理することが重要です。


まとめ

日本の償却資産税は、金額的には法人税ほど大きくならない場合が多いものの、申告漏れが長期間継続しやすく、後日の修正対応が煩雑になりやすい税目である。

外資系企業にとっては、「法人税とは別軸の地方税」として正しく理解し、日本進出初期段階から適切な管理体制を構築することが重要である。

日本特有の制度であるからこそ、早期に専門家を交えて整理することが、無用な税務リスクを回避する近道となる。



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